お役立ち情報
2025年07月03日 [お役立ち情報]
社労士が分かりやすく解説! 「育児・介護休業法の改正で何が変わる?」 (第2回)

こんにちは。社会保険労務士の山崎です。前回に続き、令和7(2025)年4月、10月に施行の【育児・介護休業法の改正】について、顧問先から届いた質問と弊社の回答をもとにご紹介します。ぜひご覧ください。
▶前回の記事はコチラから
社労士が分かりやすく解説!「育児・介護休業法の改正で何が変わる?」(第1回)
【顧問先A】:山崎先生こんにちは。前回に続き、今年(令和7年)の4月、10月に施行の「育児・介護休業法の改正】」について、改めて情報を整理させてください!
【社労士(山崎)】:はい。ではさっそく、介護休暇の取得から見てゆきましょう。
【2025年4月施行】
1. 介護休暇を取得できる労働者の要件緩和 労使協定を締結している場合は就業規則等の見直し
【顧問先A】:これは「子の看護休暇の見直し」と同様、これまで除外されていた「継続雇用期間が6ヶ月未満」となる労働者も、介護休暇が取得できるようになったということですね。
【社労士(山崎)】:はい、その通りです。比較的勤続年数が短いケースでも、入社後すぐに介護が必要な状況となれば、介護休暇が取得できるようになりました。
【顧問先A】:弊社にはまだこういったケースはありませんが、介護は、ある日突然訪れますからね。
【社労士(山崎)】:そうなんです。企業としては、せっかく雇用した人材が「介護休暇」を取得するとなれば、業務の調整や新たな人材確保など、負担が増えるのは事実。しかし長い目でみれば、貴重な人材に再び活躍してもらうことはプラスになります。「介護離職」の防止にもつながるでしょう。
2. 介護離職防止のための雇用環境整備 【義務】
介護休業や介護両立支援制度等(※)の申出が円滑に行われるようにするため、事業主は以下@〜Cのいずれかの措置を講じなければなりません。
@ 介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
A 介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
B 自社の労働者の介護休業取得・介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供
C 自社の労働者へ介護休業・介護両立支援制度等の取得・利用促進に関する方針の周知
※@介護休暇に関する制度、A所定外労働の制限に関する制度、B時間外労働の制限に関する制度、C深夜業の制限に関する制度、D介護のための所定労働時間の短縮等の措置
望ましい ※@〜Cのうち複数の措置を講じること
【社労士(山崎)】:まさにその「介護離職を防ぐために環境を整えましょう」といった内容が、次の項目ですね。今回の法改正では、あらゆる制度に関する研修を行ったり、相談体制を設けるなど、企業側が対応すべき内容が多くなりました。
【顧問先A】:弊社でも昨年から準備を進めていましたが、予想以上に時間が必要でしたね。
【社労士(山崎)】:他社でも、そういった様子を耳にしました。たとえば相談体制の整備(相談窓口設置)についても、形式的なものではなく、しっかりと対応できる窓口を設ける必要がありますからね。個別に相談専用のメールアドレスを設定するなど、引き続き体制を整えながら頑張ってください。
3. 介護離職防止のための個別の周知・意向確認等 【義務】
(1)介護に直面した旨の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認
介護に直面した旨の申出をした労働者に対して、事業主は介護休業制度等に関する以下の事項の周知と介護休業の取得・介護両立支援制度等の利用の意向の確認を、個別に行わなければなりません。
※取得・利用を控えさせるような個別周知と意向確認は認められません。
(2)介護に直面する前の早い段階(40歳等)での情報提供
労働者が介護に直面する前の早い段階で、介護休業や介護両立支援制度等の理解と関心を深めるため、事業主は介護休業制度等に関する以下の事項について情報提供しなければなりません。
望ましい
※情報提供に当たって、「介護休業制度」は介護の体制を構築するため一定期間休業する場合に対応するものなど、各種制度の趣旨・目的を踏まえて行うこと
※情報提供の際に、併せて介護保険制度について周知すること
【顧問先A】:さらに次の項目が「介護に直面した」という申出があった場合、制度に関する個別の周知や意向確認を行うというものですね。
【社労士(山崎)】:はい、そうです。これまで企業の皆さんは、このような内容を周知する機会が少なかったと思います。
【顧問先A】:そうですね。従業員が制度等の情報を知らないことで無理をし、その結果、介護離職に追い込まれてしまう……。そういった事態にならないためにも、これらの改定は大事な要素が多いと感じました。それにしても今回、情報提供期間については細かい規定があったので、従業員の情報管理には苦労しました。
【社労士(山崎)】:「労働者が40歳に達する日(誕生日前日)の属する年度(1年間)」、もしくは「労働者が40歳に達する日の翌日(誕生日)から1年間」といった情報提供期間が定められていましたからね。日頃からデータの管理、メンテナンスをしっかりと行なうことをおススメします。
4. 介護のためのテレワーク導入 【努力義務】就業規則等の見直し
要介護状態の対象家族を介護する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることが、事業主に努力義務化されます。
【社労士(山崎)】:コロナ禍で多くの企業が取り入れたテレワーク。(職種にもよりますが)たとえば、通院の付き添いを行う日(半休取得)、午前中をテレワークにしたことで体力面の負荷が減らせたなど、仕事と介護の両立で上手く活用している方(企業)の声もよく聞きますね。
【顧問先A】:私自身も、柔軟な働き方の一つとしてテレワークは欠かせないと改めて感じています。2025年、(総務省によると)介護を理由に離職した人数は、年間10万人とも言われているとか。私たち雇用側は、法改正に基づく対応を行うのはもちろんのこと、今一度「仕事と育児・介護の両立が出来る職場環境」を見直し、従業員同士の理解を深める場を設けるなど、できることから着実に取り組んでいきますね!
次回は、2025年10月に施行の改正について、引き続き顧問先のAさんと一緒に確認していきます。
(特定社会保険労務士 山崎 香織)
※本記事は、2025 年7月3日時点での情報をもとに作成しております。
▶前回の記事はコチラから
社労士が分かりやすく解説!「育児・介護休業法の改正で何が変わる?」(第1回)
介護離職防止のための雇用環境整備が義務化。その具体的内容は?
【社労士(山崎)】:はい。ではさっそく、介護休暇の取得から見てゆきましょう。
【2025年4月施行】
1. 介護休暇を取得できる労働者の要件緩和 労使協定を締結している場合は就業規則等の見直し

【顧問先A】:これは「子の看護休暇の見直し」と同様、これまで除外されていた「継続雇用期間が6ヶ月未満」となる労働者も、介護休暇が取得できるようになったということですね。
【社労士(山崎)】:はい、その通りです。比較的勤続年数が短いケースでも、入社後すぐに介護が必要な状況となれば、介護休暇が取得できるようになりました。
【顧問先A】:弊社にはまだこういったケースはありませんが、介護は、ある日突然訪れますからね。
【社労士(山崎)】:そうなんです。企業としては、せっかく雇用した人材が「介護休暇」を取得するとなれば、業務の調整や新たな人材確保など、負担が増えるのは事実。しかし長い目でみれば、貴重な人材に再び活躍してもらうことはプラスになります。「介護離職」の防止にもつながるでしょう。
2. 介護離職防止のための雇用環境整備 【義務】
介護休業や介護両立支援制度等(※)の申出が円滑に行われるようにするため、事業主は以下@〜Cのいずれかの措置を講じなければなりません。
@ 介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
A 介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
B 自社の労働者の介護休業取得・介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供
C 自社の労働者へ介護休業・介護両立支援制度等の取得・利用促進に関する方針の周知
※@介護休暇に関する制度、A所定外労働の制限に関する制度、B時間外労働の制限に関する制度、C深夜業の制限に関する制度、D介護のための所定労働時間の短縮等の措置
望ましい ※@〜Cのうち複数の措置を講じること
【社労士(山崎)】:まさにその「介護離職を防ぐために環境を整えましょう」といった内容が、次の項目ですね。今回の法改正では、あらゆる制度に関する研修を行ったり、相談体制を設けるなど、企業側が対応すべき内容が多くなりました。
【顧問先A】:弊社でも昨年から準備を進めていましたが、予想以上に時間が必要でしたね。
【社労士(山崎)】:他社でも、そういった様子を耳にしました。たとえば相談体制の整備(相談窓口設置)についても、形式的なものではなく、しっかりと対応できる窓口を設ける必要がありますからね。個別に相談専用のメールアドレスを設定するなど、引き続き体制を整えながら頑張ってください。
個別の周知・意向確認等、労働者のデータ管理など、企業側がすべきこと
3. 介護離職防止のための個別の周知・意向確認等 【義務】
(1)介護に直面した旨の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認
介護に直面した旨の申出をした労働者に対して、事業主は介護休業制度等に関する以下の事項の周知と介護休業の取得・介護両立支援制度等の利用の意向の確認を、個別に行わなければなりません。
※取得・利用を控えさせるような個別周知と意向確認は認められません。

(2)介護に直面する前の早い段階(40歳等)での情報提供
労働者が介護に直面する前の早い段階で、介護休業や介護両立支援制度等の理解と関心を深めるため、事業主は介護休業制度等に関する以下の事項について情報提供しなければなりません。

※情報提供に当たって、「介護休業制度」は介護の体制を構築するため一定期間休業する場合に対応するものなど、各種制度の趣旨・目的を踏まえて行うこと
※情報提供の際に、併せて介護保険制度について周知すること
【顧問先A】:さらに次の項目が「介護に直面した」という申出があった場合、制度に関する個別の周知や意向確認を行うというものですね。
【社労士(山崎)】:はい、そうです。これまで企業の皆さんは、このような内容を周知する機会が少なかったと思います。
【顧問先A】:そうですね。従業員が制度等の情報を知らないことで無理をし、その結果、介護離職に追い込まれてしまう……。そういった事態にならないためにも、これらの改定は大事な要素が多いと感じました。それにしても今回、情報提供期間については細かい規定があったので、従業員の情報管理には苦労しました。
【社労士(山崎)】:「労働者が40歳に達する日(誕生日前日)の属する年度(1年間)」、もしくは「労働者が40歳に達する日の翌日(誕生日)から1年間」といった情報提供期間が定められていましたからね。日頃からデータの管理、メンテナンスをしっかりと行なうことをおススメします。
4. 介護のためのテレワーク導入 【努力義務】就業規則等の見直し
要介護状態の対象家族を介護する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることが、事業主に努力義務化されます。
【社労士(山崎)】:コロナ禍で多くの企業が取り入れたテレワーク。(職種にもよりますが)たとえば、通院の付き添いを行う日(半休取得)、午前中をテレワークにしたことで体力面の負荷が減らせたなど、仕事と介護の両立で上手く活用している方(企業)の声もよく聞きますね。
【顧問先A】:私自身も、柔軟な働き方の一つとしてテレワークは欠かせないと改めて感じています。2025年、(総務省によると)介護を理由に離職した人数は、年間10万人とも言われているとか。私たち雇用側は、法改正に基づく対応を行うのはもちろんのこと、今一度「仕事と育児・介護の両立が出来る職場環境」を見直し、従業員同士の理解を深める場を設けるなど、できることから着実に取り組んでいきますね!
次回は、2025年10月に施行の改正について、引き続き顧問先のAさんと一緒に確認していきます。
(特定社会保険労務士 山崎 香織)
※本記事は、2025 年7月3日時点での情報をもとに作成しております。