LTR通信
2026年09月30日 [LTR通信]
【LTR Interview】(番外編)士業が語る! 生成AIのリアル「できること」「難しいこと」〜生成AIを使いこなす人は、「任せどころ」を知っている

日々の暮らしからビジネスシーンまで、今や私たちの生活に大きな影響を与えている生成AI(ジェネレーティブAI)。ここ数年、「生成AIの上手な活用法」や「生成AIのメリット・デメリット」などをテーマにした特集を、さまざまなメディアで目にする機会が増えました。では、弁護士や税理士などの士業(専門家)は、生成AIという存在をどう捉え、どのように向き合っているのでしょうか。
LTR通信の誌面(本編/LTR通信2026秋冬号P2)では、弁護士の鈴木 洋平(すずき・ようへい)さんに、「生成AIに対する印象」「実際にどういった使い方をしているか?」「使ってみて感じたこと」などをお聞きしました。こちらでは、本編でお伝えしきれなかった内容を、番外編としてお届けします。
▶LTR-Interview本編(本誌記事)はこちら
LTR-Interview本編2ページ
──本編では生成AI(以下、AI)を使うにあたり、「どの工程に組み込むか」などを見極めることで、効率化を実感しているとお聞きしました。具体的な使用例をお話しいただきましたが、他の事例もぜひ教えていただけますか?
【鈴木】はい。弁護士にとって日常的な業務の一つでもある「契約書レビュー(※1)」の際にも使っています。AIに契約書を読み込ませ、気になる点や確認が必要な箇所を洗い出してもらう形です。
たとえば不動産関連でいうと、受益権売買契約書(信託財産から利益を受ける権利を売買するための契約書)において、「売主に不利な条項を抜き出して!」と言うと、補償条項や解除条項、秘密保持条項や損害賠償条項などを一覧化してくれます。AIに流れを作ってもらい、論点漏れがないように役立てています。
(※1)契約書の内容を読み込み、法的な問題やリスクがないか、依頼者にとって不利な条項が含まれていないかなどを確認する業務。
──「AIが一次的なチェックを担当、そのあとに弁護士が判断をする」という流れで、かなり効率化が図れそうですね。
【鈴木】そうなんです。また、「証拠整理」を行う際にも活用しています。たとえば交通事故のケースなら、診断書や写真、修理見積もりや事前交渉のメールなどのやりとりを全部読ませると、「時系列」のリストを作ってくれる。また、不動産の信託受益権化(※2)の事件なら、信託契約書やPM契約書、ML契約書、受益権譲渡契約書などからスキーム図を当事者の名称入りで作成してくれます。
(※2)所有する不動産の所有権を信託銀行や信託会社などに移転し、その不動産から得られる賃料収入や売却益などの経済的利益を受け取る権利(信託受益権)に変換すること。
──確かにこういった複数のデータや資料をもとに、図や表にまとめる「情報整理」の部分は、AIの得意分野とも言われています。ファクトチェックは必要だとしても、ベースの形まで仕上げてくれるのはありがたいですね。
【鈴木】はい、業務時間は圧倒的に減ったかと! これにより私自身は案件の本質を考えたり、依頼者と向き合ったり、今後の対応を検討したりする時間を確保しやすくなったなと思います。
──そういったメリットを感じる一方で、あえてデメリットを挙げるとしたらどんなことでしょうか?
【鈴木】AIに質問すると、(同じ事案でも)質問の仕方や与える情報によって、異なる答えが返ってくることがあります。分かりやすく言うと、Aという可能性とBという可能性がある場合、自分に都合のよい情報だけをAIに与えて質問すれば、自分が望んでいる結論に近い回答を引き出すことができるんですよね。
──なるほど! 依頼者の方が「調べてみたら、自分の事件についてこう書かれていましたよ」とAIの回答を持ってきたとしても、それが必ずしも客観的な判断とは限らない。こういったことを、前提として頭に入れておくことは大事なポイントですね。
【鈴木】私自身はそういう使い方はしませんが、「AIがこう言っている」と主張する依頼者については、こちらも注意しながら対応してゆくべきだと感じます。
──では改めて、「ここはAIに任せないほうがよい」と思う部分を教えてください。
【鈴木】やはり依頼者への説明など、コミュニケーションの部分ですね。弁護士の仕事では、正しい情報を伝えるだけでなく、何よりも相手に納得してもらい、安心してもらうことが大事。そこは、「人」にしか担えない部分ですからね。
──私は日常生活で何らかのサービスを利用するとき、少しでも不安を感じたら、まだネットよりも「人」を選んでいる気がします。
【鈴木】私もそういうケースはありますね。最近も家族旅行でホテルを予約しましたが、布団やベッドなど室内の細かいリクエストをする必要があって。備考欄に記入したもののちょっと心配になり、結局は電話で確認しました。
AIに任せられることはAIへ。その一方で、人だからこそできること、人に任せたいと思うケースには、時間を使う。これからのAIとの付き合い方は、そんなふうに切り分けて考えることが大切なのかもしれません。 (取材・文/小林 真由美)
LTR通信の誌面(本編/LTR通信2026秋冬号P2)では、弁護士の鈴木 洋平(すずき・ようへい)さんに、「生成AIに対する印象」「実際にどういった使い方をしているか?」「使ってみて感じたこと」などをお聞きしました。こちらでは、本編でお伝えしきれなかった内容を、番外編としてお届けします。
▶LTR-Interview本編(本誌記事)はこちら
LTR-Interview本編2ページ
「まずAIに整理してもらう」弁護士が実践する生成AIの活用法
──本編では生成AI(以下、AI)を使うにあたり、「どの工程に組み込むか」などを見極めることで、効率化を実感しているとお聞きしました。具体的な使用例をお話しいただきましたが、他の事例もぜひ教えていただけますか?
【鈴木】はい。弁護士にとって日常的な業務の一つでもある「契約書レビュー(※1)」の際にも使っています。AIに契約書を読み込ませ、気になる点や確認が必要な箇所を洗い出してもらう形です。
たとえば不動産関連でいうと、受益権売買契約書(信託財産から利益を受ける権利を売買するための契約書)において、「売主に不利な条項を抜き出して!」と言うと、補償条項や解除条項、秘密保持条項や損害賠償条項などを一覧化してくれます。AIに流れを作ってもらい、論点漏れがないように役立てています。
(※1)契約書の内容を読み込み、法的な問題やリスクがないか、依頼者にとって不利な条項が含まれていないかなどを確認する業務。
──「AIが一次的なチェックを担当、そのあとに弁護士が判断をする」という流れで、かなり効率化が図れそうですね。
【鈴木】そうなんです。また、「証拠整理」を行う際にも活用しています。たとえば交通事故のケースなら、診断書や写真、修理見積もりや事前交渉のメールなどのやりとりを全部読ませると、「時系列」のリストを作ってくれる。また、不動産の信託受益権化(※2)の事件なら、信託契約書やPM契約書、ML契約書、受益権譲渡契約書などからスキーム図を当事者の名称入りで作成してくれます。
(※2)所有する不動産の所有権を信託銀行や信託会社などに移転し、その不動産から得られる賃料収入や売却益などの経済的利益を受け取る権利(信託受益権)に変換すること。
──確かにこういった複数のデータや資料をもとに、図や表にまとめる「情報整理」の部分は、AIの得意分野とも言われています。ファクトチェックは必要だとしても、ベースの形まで仕上げてくれるのはありがたいですね。
【鈴木】はい、業務時間は圧倒的に減ったかと! これにより私自身は案件の本質を考えたり、依頼者と向き合ったり、今後の対応を検討したりする時間を確保しやすくなったなと思います。
自分に都合のいい答えも? AIを使うときの大事なポイント
──そういったメリットを感じる一方で、あえてデメリットを挙げるとしたらどんなことでしょうか?
【鈴木】AIに質問すると、(同じ事案でも)質問の仕方や与える情報によって、異なる答えが返ってくることがあります。分かりやすく言うと、Aという可能性とBという可能性がある場合、自分に都合のよい情報だけをAIに与えて質問すれば、自分が望んでいる結論に近い回答を引き出すことができるんですよね。
──なるほど! 依頼者の方が「調べてみたら、自分の事件についてこう書かれていましたよ」とAIの回答を持ってきたとしても、それが必ずしも客観的な判断とは限らない。こういったことを、前提として頭に入れておくことは大事なポイントですね。
【鈴木】私自身はそういう使い方はしませんが、「AIがこう言っている」と主張する依頼者については、こちらも注意しながら対応してゆくべきだと感じます。
──では改めて、「ここはAIに任せないほうがよい」と思う部分を教えてください。
【鈴木】やはり依頼者への説明など、コミュニケーションの部分ですね。弁護士の仕事では、正しい情報を伝えるだけでなく、何よりも相手に納得してもらい、安心してもらうことが大事。そこは、「人」にしか担えない部分ですからね。
──私は日常生活で何らかのサービスを利用するとき、少しでも不安を感じたら、まだネットよりも「人」を選んでいる気がします。
【鈴木】私もそういうケースはありますね。最近も家族旅行でホテルを予約しましたが、布団やベッドなど室内の細かいリクエストをする必要があって。備考欄に記入したもののちょっと心配になり、結局は電話で確認しました。
AIに任せられることはAIへ。その一方で、人だからこそできること、人に任せたいと思うケースには、時間を使う。これからのAIとの付き合い方は、そんなふうに切り分けて考えることが大切なのかもしれません。 (取材・文/小林 真由美)

