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LTR通信
2025年09月29日 [LTR通信]

【ハマ街ビト】 (番外編) 47歳で脳梗塞に見舞われた「鎌倉のカレーの女王」 逆境の中で生まれた「薬膳カレールー」が 自社ブランドの大きな柱に! <株式会社エム・トゥ・エム>

鎌倉市内に本社と工場を構える「株式会社エム・トゥ・エム」は、自社カレールーブランド「MtoM」の開発、製造を手掛けています。代表取締役の伊藤 眞代(いとう・まこ)さんは、倒産寸前だった会社を実父から引き継ぎ、V字回復を実現した経営者。しかし現在に至るまでには、数々の試行錯誤や挑戦があったそうです。

LTR通信の誌面(本編/LTR通信2025秋冬号P3–P5)では、経営再建の過程から、自社ブランド確立に至るまでの道のり、商品開発に込めた想いなど、貴重なお話をお聞きしました。こちらでは、本編でお伝えしきれなかった内容を番外編としてお届けします。

▶ハマ街ビト本編(本誌記事)はこちら
ハマ街ビト本編3ページ
ハマ街ビト本編4ページ
ハマ街ビト本編5ページ

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株式会社エム・トゥ・エム 代表取締役 伊藤 眞代(いとう・まこ)さん





――設立時から売れ続けている商品「カレールー」「ビーフシチュールー」「ホワイトソース」に加え、キビ粉(※)を使用したグルテンフリーカレー「輝美カレールー(甘口・中辛)」「薬膳カレールー(中辛)」も人気を集めているそうですね。

【伊藤】キビ粉を使うことにより、カレーの味わいとともに、サラッとした舌触りも楽しんでいただける商品です。(※)イネ科の一年草の植物である「キビ」の実をミキサーなどで粉末状にしたもの。

――米粉は比較的よく目にしますが、キビ粉はめずらしいですよね?

【伊藤】そうなんです。米粉と比較すると、キビ粉はドロッとしすぎないので食べやすいんですよ。あっ、ぜひ「薬膳カレールー」を使った「カレースープ」を召し上がってみてください。(さっそく、カレースープを試食させていただきました♪)

――おいしいですね〜。カレーならではのスパイシーな味わいもさることながら、なめらかですごく飲みやすい。まさに、スペシャルな薬膳スープ!

【伊藤】これを朝飲むと、1日元気でいられるんですよ。薬膳カレーのルーをお湯で溶いて軽く煮込むだけ。サラッとしたカレーなので、こんなふうにスープにしたり、だしとあわせてカレー鍋にしたり、アレンジを楽しめるのも魅力です。

――万能なルーなんですね。

【伊藤】私は2017年に脳梗塞を患ったんですが、「朝からカレーを食べることで、脳が活性化するのでは?」というところから、「朝だから重くないカレーが好ましい」「薬膳カレーはどうだろう?」という発想に至りました。実際にカレーのスパイスは、漢方薬としても使用されていますし!

――自らの壮絶な経験もまた、新商品の開発へとつながったんですね。

【伊藤】はい。常に「次は何が来るか?」というアンテナは張り巡らせていますが、以前から「ヴィーガン」「グルテンフリー」のニーズの高まりは感じていたので、比較的早い段階から研究をしてきました。病気をきっかけに「脳の活性化に効くもの、身体によいものを取り入れたい」という気持ちも強くなり、「薬膳カレールー」はスピード感を持って開発を進めました。「急いで!」という私の要望に応えてくれた製造担当の弟には感謝しています。

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「薬膳カレールー(中辛)」

「食事で免疫力を高めよう」をコンセプトに、原料に薬膳食材の、黒きくらげ、金針菜、ネムノキの花を使用し、スパイスの量をさらに増したスパイシーでサラッとしたカレールー。日本VEGAN認証、鎌倉薬膳アカデミーの監修を受けたこだわりの味が楽しめる。小麦粉・化学調味料・動物由来原料・着色料不使用。



――今もお話にありましたが、会社が大きく成長し多忙を極める中、脳梗塞に見舞われたのですね。当時の様子を少しお聞かせいただけますか。

【伊藤】業績は順調に伸び、右肩上がり。でも、同時に工場はフル回転となるので従業員にも負担がかかり、ちょっとしたことで(従業員同士が)言い合うようになり……。社内の調整役をやりながら、お客さまとの関係性も構築するなど、時間がいくらあっても足りませんでした。「疲れているな」と感じながらも走り続けていたら、あるとき脳梗塞で倒れてしまったんです。

――医師からは「重度の後遺症の影響で、仕事復帰は絶望的」と言われたとか?

【伊藤】おかげさまで一命はとりとめましたが、言語障害や手足のしびれなどの後遺症に悩まされました。リハビリを続けることで少しずつ回復はしましたが、実は今でも思うように言葉が出なかったり、数字の大小の認識が少し難しかったりするんです。また仕事に復帰したものの、自分の武器でもある「話術」を活かした営業ができなくなってしまった。正直なところ、「このまま生きていても仕方ない……」と思ったこともあります。

――そんな苦しい日々をどのようにして乗り越えたのでしょうか。

【伊藤】家族や友人など、身近な存在が支えてくれたことは大きかったのですが、やはり「思うように仕事ができない」という苦しみは、そう簡単には拭えませんでした。でもある日、リハビリとして地元の鎌倉を散歩していたとき、ふと見上げた空の広さ、海の大きさに心が揺れ動いたんです。「あぁ、空や海は何て広くて大きいんだろう。それに比べたら、私の悩みはちっぽけなものだ!」そう感じてからは、徐々に前向きになりました。そして、今はこの「薬膳カレー」が私のパワーの源になっています。



――今後予定している商品開発や新たなチャレンジなどを(お話しできる範囲で)教えていただけますか?

【伊藤】そうですね。いくつかありますが、実際に計画段階として進めているところでいえば、「レトルトカレー」です。1人暮らしの方はもちろん、最近では高齢の方もレトルト食品を上手に利用する方が増えていますよね。エム・トゥ・エムのおいしさを存分に味わえるレトルトカレー、楽しみにお待ちいただければと思います。

――それは待ち遠しいです! 

【伊藤】また海外展開も視野に、展示会などの開催も考えています。健康志向が強い方の多い海外では、日本人が作る「グルテンフリー」の商材は注目されていると思います。自社のブランドがあれば、あらゆる展開ができますからね。今は「自社ブランドを持っていてよかった」と強く感じています。

――改めて、自社ブランドで売るためには何が必要だとお考えですか?

【伊藤】基本的なことかもしれませんが、魅力的な商品があることと、自社の強みを認識し、他社との差別化が図れていることですね。たとえば弊社で言えば、「無添加」や「(素材本来の味を引き出す)こだわりのカレールー」、そして「高級感を意識したパッケージ」などです。

――確かに御社のパッケージには、オリジナリティを感じます。

【伊藤】かつてのカレールーは、黄色やオレンジのパッケージが主流でしたが、弊社はあえて黒で勝負しました。食品業界において、黒はマイナスのイメージがあります。でも、高級志向を打ち出すためにも、そこは譲りたくなかった。結果的に商品を置いた「高級スーパー」との相性もよく、多くの方に支持していただけるようになったんです。

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人気の3商品を集めたおすすめセット

――やはり「自社の強みを知る」そのうえで「差別化を図る」ことは、非常に重要ですね。では最後に、今後の夢や展望をお聞かせいただけますか?

【伊藤】この新社屋(工場)に続き、次はグルテンフリーに特化した工場を作りたいと考えています。2階を店舗にして、もっと多くの方にエム・トゥ・エムのカレーを味わっていただけたらうれしいです。あとは、弊社のルーツにもなっている西洋料理店「太平洋」を復活させること! これからもお客さまに喜んでいただけるような商品をお届けしてゆきたいですね。
(取材・文/小林 真由美)

株式会社エム・トゥ・エムのホームページはこちらから

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